5.3 遺伝的要因

5.3.1 霜降り形成に関わる遺伝子

多くの遺伝的要因が霜降り形成に関与していることが明らかになっている:

遺伝子 機能 和牛での役割
FASN(脂肪酸合成酵素) 脂肪酸合成の中心酵素 和牛で発現量が高い
SCD1(ステアロイル-CoA不飽和化酵素) 飽和→一価不飽和脂肪酸変換 オレイン酸含量増加に関与
FABP4(脂肪酸結合タンパク質) 細胞内脂肪酸輸送 霜降り形成部位の選択に関与
PPARG(PPARγ遺伝子) 脂肪細胞分化の転写因子 和牛で特定多型あり
MC4R(メラノコルチン4受容体) 食欲・代謝調節 脂肪蓄積効率に影響

5.3.2 品種間での遺伝的差異

黒毛和種はその他の肉牛品種と比較して、以下の遺伝的特徴を持つ:

  1. 筋内脂肪細胞の数が多い:筋肉組織中に存在する脂肪前駆細胞の数が品種的に多い
  2. SCD1の発現量が高い:一価不飽和脂肪酸(特にオレイン酸)への変換が活発で、融点が低い(口溶けが良い)脂肪が形成される
  3. 糖輸送体(GLUT4)の発現:インスリン応答性が高く、高エネルギー飼料投与時の脂肪蓄積効率が高い