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YU-101 · Beef Anatomy

牛肉解剖学

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00

YU-101 牛肉解剖学

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YU-101 牛肉解剖学

01

焼肉大学 — 正規カリキュラム

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焼肉大学 — 正規カリキュラム


03

1.1 牛の骨格系全体像

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1.1 牛の骨格系全体像

1.1.1 牛骨格の基本数値

成体の黒毛和牛(雌)の基本的な体格指標:

計測項目 標準値
体重 450〜550kg
体高(キ甲部) 120〜130cm
体長(肩端〜坐骨端) 135〜145cm
骨の総数 約208〜210本
骨格の総重量比 体重の約15〜18%

解剖学基礎知識:哺乳類の四肢骨格は基本的に相同構造(ホモロジー)を持つ。ヒトの手首(手根骨)は牛の球節部に対応し、ヒトの踵骨は牛の飛節(跗関節)の踵骨に対応する。牛は指先(第3・第4指)で立つ「偶蹄類」であり、この特殊な趾行性が脚部筋肉の発達パターンを決定している。

1.1.2 主要骨格の名称と位置

頭部〜頸部の骨格
- 頭骨(とうこつ):前頭骨・頭頂骨・後頭骨などから構成。角は前頭骨の突起から発達。
- 頸椎(けいつい):7個。頭部支持と広い可動域を持つ。頸部は「タン周辺筋群」「頸根部筋群」の骨格基盤。

体幹の骨格
- 胸椎(きょうつい):13個。棘突起が長く発達し、「ロース」や「リブ」部位の骨格を形成。
- 腰椎(ようつい):6個。体幹後部を支持。「サーロイン」「ロース」後部の骨格基盤。
- 仙骨(せんこつ):5個が癒合。骨盤後端を形成。
- 尾椎(びつい):18〜20個。テールスープの原料。
- 胸骨(きょうこつ)):7つの胸骨節から構成。「ブリスケット(胸部)」の中心骨格。
- 肋骨(ろっこつ):13対(計26本)。真肋8対・仮肋5対。リブロース・ショートリブの骨格。

四肢の骨格
- 肩甲骨(けんこうこつ):前肢帯。「肩ロース」「ウデ(肩)」部位の骨格基盤。扇形で平板状。
- 上腕骨(じょうわんこつ):前肢の最上部。三角筋・上腕筋群の付着部。
- 橈骨・尺骨(とうこつ・しゃっこつ):前腕部。
- 手根骨(しゅこんこつ):前管部(球節上部)。
- 中手骨(ちゅうしゅこつ):前管(前下肢の「管」部)。
- 指骨(しこつ):第3・4指のみ発達。蹄に包まれる。
- 寛骨(かんこつ):腸骨・坐骨・恥骨の癒合体。骨盤を形成。
- 大腿骨(だいたいこつ):後肢最大の長骨。「ランイチ」「シンタマ」の骨格基盤。
- 脛骨・腓骨(けいこつ・ひこつ):下腿部。
- 跗骨(ふこつ):飛節(ヒザ関節に相当)。

04

1.2 主要筋肉系と解剖学的分類

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1.2 主要筋肉系と解剖学的分類

牛の筋肉は解剖学的に以下の3系統に大別される:

1.2.1 体表筋(ひょうひきん)

皮膚直下に位置し、皮膚を動かす薄い筋肉群。食肉への利用価値は低い。

1.2.2 固有背筋群(こゆうせききんぐん)

最長筋(さいちょうきん、Longissimus dorsi)は食肉として最重要の筋肉である。

最長筋の重要性:脊椎に沿って頸部から腰部まで連続して走行する最長筋は、全身で最も長い筋肉であり、「ロース」「リブロース」「サーロイン」の主体を構成する。日常的な体重支持にのみ使われ運動量が少ないため、筋繊維が細く柔らかく、霜降りが入りやすい部位となる。

1.2.3 体肢筋群(たいしきんぐん)

筋肉名 位置 対応する食肉部位 運動量 肉質傾向
最長筋 背部〜腰部 ロース・リブロース・サーロイン 柔らか・霜降りあり
腰筋(大腰筋) 腰椎腹側 ヒレ(テンダーロイン) 極めて低 最も柔らかい
腸骨筋 腸骨前部 ヒレ後端 柔らか
三角筋 肩峰部 ミスジ(チャックテンダー) やや硬め、筋あり
菱形筋 肩甲骨内側 肩ロース 中程度
深胸筋 胸部深層 ブリスケット 硬め・コラーゲン豊富
大腿二頭筋 後肢外側 シキンボ・マルカワ 硬め・赤身強い
半腱様筋 後肢後内側 シンシン(eye of round) 硬め・赤身
横隔膜(柱頭部) 胸腹境界 ハラミ(Skirt Steak) 独特の食感・旨味豊富

第2章:部位別詳細解説

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2.1 日本における牛肉部位の分類体系

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CHAPTER 05 · 想定読了 3 分

2.1 日本における牛肉部位の分類体系

日本農林規格(JAS)に基づく牛肉の部位分類は以下の通りである。大きく「ネック」「カタ」「カタロース」「リブロース」「サーロイン」「ヒレ」「ともバラ」「カタバラ」「ウデ」「モモ」「ランプ」「スネ」の12部位に分類される。

日本式部位分類の特徴:日本の部位分類は和牛の特性(霜降りの入り方)を最大限に活かすよう設計されており、欧米式の分類と細分化の程度が異なる。同じ解剖学的部位を複数の名称で呼ぶことも多く(例:サーロインとストリップロインが部分的に重複)、国際的な標準化が課題となっている。

06

2.2 各部位の詳細解説

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2.2 各部位の詳細解説

2.2.1 ネック(頸部)

解剖学的位置:頸椎周辺の筋肉群。主要筋肉は頭最長筋・頸最長筋・菱形筋など。

筋肉繊維の特徴
- 頸部は常に頭部(約30kgの重量)を支持するため、筋繊維が太く発達している
- 結合組織(コラーゲン)が豊富
- 長時間加熱(煮込み)により旨味成分が溶出する

脂肪分布:霜降りは少なく、赤身が主体。

焼肉での活用:そのまま焼くより牛すじ煮込みや出汁取りに向く。一部の希少部位として「ネック芯」が高評価される。

2.2.2 カタ(肩部)/ ウデ

解剖学的位置:肩甲骨周辺の筋肉群。主要筋肉は三角筋・大円筋・棘上筋・棘下筋・小円筋など。

カタの中の希少部位「ミスジ(三筋)」

ミスジは棘下筋(Infraspinatus muscle)の前部を指す。

特性 詳細
別名 「フラットアイアン(Flat Iron)」(米国式名称)
筋繊維方向 水平・細繊維
脂肪分布 均一な霜降りが入りやすい
中央部の筋 太い白い筋(結合組織)が縦走する
食感 柔らかく、独特のリッチな風味
一頭当たりの取得量 約1〜2kg(希少性が高い)

2.2.3 カタロース(チャックロール)

解剖学的位置:第3〜第7頸椎および第1〜第4胸椎に付随する筋肉群。主要筋肉は頭最長筋・頸最長筋・半棘筋など。

特徴
- ロースとカタの中間的な特性を持つ
- 霜降りが入りやすいが、やや繊維が太め
- 「肩ロース」として販売されることが多い

2.2.4 リブロース(リブアイ)

解剖学的位置:第5〜第12肋骨付近の最長筋・肋間筋・肋骨挙筋群。

リブロースが「焼肉の王」と呼ばれる理由:最長筋の中でも特に霜降りが入りやすい部位であり、筋内脂肪(IMF)含量が全部位で最も高くなる傾向がある。リブロースキャップ(spinalis dorsi muscle)はリブロースを包む薄い筋肉で、特に風味豊かな部位として珍重される。

筋肉繊維の特徴
- 繊維方向:体軸に沿って水平
- 繊維径:細(低運動量の証)
- 霜降り(IMF):5〜30%(品種・飼育条件による)

2.2.5 サーロイン(ストリップロイン)

解剖学的位置:第13胸椎〜第6腰椎に付随する最長筋後部。

特徴
- 背中の後部に相当し、フィレと並ぶ高級部位
- 「サーロイン」の語源については複数の説があるが、英語の「sirloin」はフランス語「surlonge(腰部の上)」が語源とされる
- 脂肪のキャップ(外周脂肪)が厚いのが特徴

2.2.6 ヒレ(テンダーロイン)

解剖学的位置:腰椎腹側に沿って走行する大腰筋(Psoas major)および腸骨筋(Iliacus)。

ヒレが最も柔らかい理由:大腰筋は体幹と後肢をつなぐ深部の筋肉であり、日常的な運動にほとんど使われない。このため筋繊維が極めて細く(タイプI遅筋繊維が主体)、結合組織が少なく、舌でも容易にほぐれるほどの柔らかさを持つ。一頭から取れる量は約2〜3kgと少なく、全体の約1%程度に過ぎない希少部位。

2.2.7 バラ(カタバラ・ともバラ)

解剖学的位置:肋骨下方〜腹部の筋肉群。外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・腹直筋が主体。

バラの細分類 解剖学的部位 特徴
ナカバラ(インサイドスカート) 内腹斜筋 繊維が粗め・旨味豊富
ソトバラ(アウトサイドスカート) 外腹斜筋 ハラミに近い食感
カイノミ 腹斜筋下端 ヒレに近い柔らかさ、希少
ショートリブ 第6〜8肋骨間のバラ肉 骨付きでジューシー

2.2.8 モモ(ヒンドクォーター各部)

モモは後肢の大腿部に相当し、最も筋肉量の多い部位群である。

部位名 解剖学的筋肉 位置 特徴
ランイチ 大腿直筋・外側広筋(一部) 後肢外前部 赤身で旨味あり
シンタマ 大腿四頭筋全体 後肢前部 キメ細かい赤身、ローストビーフに最適
シキンボ(マルカワ) 大腿二頭筋 後肢外側後部 運動量多く硬め、薄切りで焼肉に
ヒウチ 半腱様筋・半膜様筋 後肢後内側 「シンシン」とも呼ばれる赤身の代表
トモサンカク(ランプ) 大臀筋・中臀筋 坐骨〜大腿後上部 霜降りが入りやすい上モモ系の好部位

第3章:和牛 vs 乳牛 vs 海外産牛の解剖学的違い

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3.1 品種の分類と体型の違い

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3.1 品種の分類と体型の違い

3.1.1 主要品種の概要

品種区分 代表品種 原産地 主な用途
和牛(日本固有種) 黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種 日本 肉用専用
乳用種(Dairy) ホルスタイン・フリージアン オランダ・ドイツ 泌乳専用(雄は交雑肉用)
肉乳兼用種 ブラウンスイス・シメンタール スイス・ドイツ 肉・乳双用
欧州肉用種 アバディーンアンガス・ヘレフォード 英国・米国 肉用専用
ブラジル系品種 ネローレ(Zebu系) インド→ブラジル 熱帯肉用

3.1.2 骨格・体型の比較

黒毛和種(Wagyu)の体型的特徴
- 短く丸みのある体型(「コンパクト型」)
- 四肢が比較的短い
- 深い体幅・豊かな肋部が特徴
- 腰部と後肢の発達が良い

和牛の体型進化:黒毛和種は明治時代以降、在来和牛とシメンタール・ショートホーン・エアシャー等の外来種との交配によって改良された品種である。その後、品種純化・選抜育種が進んだ結果、現在の独自の体型と霜降り形成能力が確立された。

ホルスタインの体型的特徴
- 細長くシャープな体型(「Angular型」)
- 四肢が長い(乳房容積確保のため)
- 背線が直線的
- 筋肉量は和牛に劣るが、骨格が大きく体重は重い

計測項目 黒毛和種(雌) ホルスタイン(雌) アンガス(雌)
成体体重 450〜550kg 600〜700kg 500〜600kg
体高 120〜130cm 140〜150cm 125〜135cm
枝肉重量 250〜350kg 300〜380kg 280〜360kg
筋内脂肪率(IMF) 20〜40% 3〜8% 4〜12%
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3.2 筋肉発達パターンの違い

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3.2 筋肉発達パターンの違い

3.2.1 筋肉繊維タイプの比較

筋繊維は大きく以下の2タイプ(さらに細かくは3タイプ)に分類される:

繊維タイプ 別名 エネルギー代謝 収縮速度 特徴
タイプI 遅筋(赤筋)・SO繊維 有酸素性 遅い 疲労耐性大、色が赤い
タイプIIa 中間型・FOG繊維 有酸素+解糖 中速 中程度の疲労耐性
タイプIIb 速筋(白筋)・FG繊維 解糖性 速い 疲労しやすい、色が淡い

品種間での繊維タイプ分布の違い:

品種 タイプI比率 タイプII比率 肉色傾向 保水性
黒毛和種 高め 低め 明るい赤 高い
ホルスタイン 低め 高め 濃い赤 やや低い
アンガス 中程度 中程度 中程度の赤 中程度
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3.3 脂肪分布の品種間比較

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3.3 脂肪分布の品種間比較

3.3.1 脂肪の解剖学的分類

牛体内の脂肪は以下の4種に分類される:

  1. 皮下脂肪(subcutaneous fat):皮膚直下。枝肉外周を覆う「外脂肪」。
  2. 腔内脂肪(cavity fat):胸腔・腹腔内臓器周辺。ケンネ脂肪(腎臓周辺)が代表。
  3. 筋間脂肪(intermuscular fat):筋肉と筋肉の間の脂肪。「サシ」とは区別する。
  4. 筋内脂肪(intramuscular fat、IMF):筋肉繊維の束の間に蓄積する脂肪。これが「霜降り(サシ)」の本体。

霜降りの正体:日本語で「霜降り(しもふり)」と呼ばれる筋内脂肪は、英語では "marbling"(大理石模様)と表現される。この脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪とは異なる代謝経路で形成され、遺伝的要因と後天的な飼育管理の双方に強く規定される。


第4章:枝肉の分割方法

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4.1 と畜から枝肉までの流れ

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4.1 と畜から枝肉までの流れ

4.1.1 基本的な処理工程

生体搬入
    ↓
スタンニング(気絶処理)— 電気式または空気圧ガン式
    ↓
放血(頸動脈切断)— 血液回収
    ↓
剥皮(スキニング)— 皮革資源として活用
    ↓
内臓摘出(エビセレーション)— 可食内臓と廃棄内臓の分離
    ↓
大割(二分割)— 脊椎正中線で左右二分
    ↓
検査(と畜検査)— 公的獣医師による検査
    ↓
冷却(チリング)— 0〜4℃で24〜48時間
    ↓
枝肉(Branch Carcass)完成

4.1.2 枝肉歩留まり

「枝肉歩留まり」とは生体重に対する枝肉重量の割合であり、品種・性別・肥育度によって異なる。

品種 枝肉歩留まり
黒毛和種(去勢) 56〜62%
ホルスタイン(去勢) 52〜58%
アンガス(去勢) 54〜60%
11

4.2 日本式の分割方法(JAS規格)

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4.2 日本式の分割方法(JAS規格)

4.2.1 大割(おおわり)

枝肉(二分体)を前躯(ぜんく)と後躯(こうく)に分割する工程。第12〜13肋骨間で切断する。

前躯(前半身)に含まれる部位:
- ネック・カタ・カタロース・リブロース
- カタバラ・ムネ(胸部)
- 前肢(スネ)

後躯(後半身)に含まれる部位:
- サーロイン・ヒレ・ランプ
- ともバラ・モモ各部
- 後肢(スネ)

4.2.2 中割(ちゅうわり)・小割(こわり)

工程 内容
中割 大割後の前躯・後躯をさらに大きなブロックに分割(ネック除去、カタ・ロースの粗分離など)
小割 各部位を最終的な販売・使用単位に仕上げる。筋膜の除去、トリミングを含む

4.2.3 部位ごとの解体手順例(後躯・モモの場合)

  1. 腸骨稜に沿ってランプを切り離す
  2. 大腿骨を露出させ、周辺筋群を分離
  3. 大腿二頭筋(シキンボ)を骨から切り離す
  4. 大腿四頭筋(シンタマ)を分離
  5. 半腱様筋・半膜様筋(ヒウチ)を分離
  6. 内転筋群(ランイチ主要部)を分離
  7. 各部位のトリミング(筋膜・余剰脂肪の除去)
12

4.3 国際的な分割方式の比較

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4.3 国際的な分割方式の比較

4.3.1 日本式 vs 韓国式 vs 西洋式

日本式(JAS準拠)の特徴:
- 12部位への細分化が基本
- 筋肉単位での分離を重視(バランスの取れた霜降り部位の確保)
- 骨を早期に除去するボーンレス(脱骨)処理が主流
- 焼肉・すき焼き・しゃぶしゃぶ向けの薄切り加工を前提

韓国式の特徴:
- 解体単位は日本式と類似しているが、部位名称が異なる(カルビ、テジダリなど)
- 骨付きカルビ(LA カルビ)は脊椎に対して直角に薄くスライスする独特の切断法
- 内臓部位の利用が極めて積極的(コプチャン、マッチャン等の腸、コプトゥギ等の胃)

米国式(USDA/NAMP番号体系)の特徴:
- プライマルカット(8区分)→サブプライマル→ポーションカットの三段階
- チャック(Chuck)・リブ(Rib)・ロイン(Loin)・ランプ(Round)・フランク(Flank)・プレート(Plate)・ブリスケット(Brisket)・シャンク(Shank)の8プライマル
- 骨付きのままでの流通が多い
- ポーターハウス・T-ボーンステーキなど、骨付き大型カットが文化的に重要

分割観点 日本式 韓国式 米国式
基本分類数 12部位 約10部位 8プライマル
骨の扱い 早期脱骨が主 骨付きカットを重視 骨付き流通多い
切断方向 筋肉に沿って分離 骨に対して直角も使用 粗い大型分割
薄切り加工 主流 主流 少ない(ステーキ主流)
内臓部位 ホルモン文化として別体系 メインの食文化に組み込む サブ的利用

第5章:霜降り(サシ)の形成メカニズム

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5.1 霜降りとは何か

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5.1 霜降りとは何か

霜降りとは牛肉の筋肉組織内に白い脂肪が霜のように分散して沈着した状態を指し、英語の「marbling(マーブリング)」に相当する。この筋内脂肪(IMF: Intramuscular Fat)は加熱時に溶け出して旨味・コク・ジューシー感をもたらす。

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5.2 脂肪細胞の生物学

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5.2 脂肪細胞の生物学

5.2.1 脂肪細胞の分化過程

霜降りの形成は、脂肪前駆細胞(preadipocyte)成熟脂肪細胞(mature adipocyte)へと分化する過程に依存する。

脂肪細胞の分化は以下の転写因子カスケードによって制御される:

間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell)
        ↓ C/EBPβ・C/EBPδ活性化
脂肪前駆細胞(Pre-adipocyte)
        ↓ PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)
        ↓ C/EBPα の活性化
成熟脂肪細胞(Mature Adipocyte)
        ↓ 中性脂肪の蓄積
霜降り(サシ)形成

PPARγの重要性:PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor gamma)は「脂肪細胞分化のマスター調節因子」と呼ばれ、脂肪細胞への分化に不可欠の核内受容体である。和牛ではこのPPARγの活性が他品種に比べて高いことが霜降り形成の多さに寄与していると考えられている。

5.2.2 霜降り形成の組織学的過程

  1. 幼若期(0〜12ヶ月):筋肉の成長が優先され、筋繊維の数と径が増加する
  2. 発育期(12〜18ヶ月):筋間・皮下脂肪の蓄積が始まる
  3. 肥育期(18〜30ヶ月):筋肉内への脂肪蓄積(IMF)が本格化する
  4. 仕上げ期(30〜36ヶ月):高エネルギー飼料(濃厚飼料)によるIMFの最大化
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5.3 遺伝的要因

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5.3 遺伝的要因

5.3.1 霜降り形成に関わる遺伝子

多くの遺伝的要因が霜降り形成に関与していることが明らかになっている:

遺伝子 機能 和牛での役割
FASN(脂肪酸合成酵素) 脂肪酸合成の中心酵素 和牛で発現量が高い
SCD1(ステアロイル-CoA不飽和化酵素) 飽和→一価不飽和脂肪酸変換 オレイン酸含量増加に関与
FABP4(脂肪酸結合タンパク質) 細胞内脂肪酸輸送 霜降り形成部位の選択に関与
PPARG(PPARγ遺伝子) 脂肪細胞分化の転写因子 和牛で特定多型あり
MC4R(メラノコルチン4受容体) 食欲・代謝調節 脂肪蓄積効率に影響

5.3.2 品種間での遺伝的差異

黒毛和種はその他の肉牛品種と比較して、以下の遺伝的特徴を持つ:

  1. 筋内脂肪細胞の数が多い:筋肉組織中に存在する脂肪前駆細胞の数が品種的に多い
  2. SCD1の発現量が高い:一価不飽和脂肪酸(特にオレイン酸)への変換が活発で、融点が低い(口溶けが良い)脂肪が形成される
  3. 糖輸送体(GLUT4)の発現:インスリン応答性が高く、高エネルギー飼料投与時の脂肪蓄積効率が高い
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5.4 飼育環境と飼料の影響

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5.4 飼育環境と飼料の影響

5.4.1 肥育ステージ別の飼料管理

ステージ 月齢 飼料内容 目的
育成期 0〜12ヶ月 粗飼料主体(牧草・稲わら) 骨格・内臓の発達
前肥育期 12〜18ヶ月 粗飼料+濃厚飼料(5〜6kg/日) 筋肉量の増加
中肥育期 18〜24ヶ月 濃厚飼料増量(7〜8kg/日) 筋間脂肪の蓄積開始
後肥育期 24〜30ヶ月 高濃厚飼料(8〜10kg/日) IMF(霜降り)の急速増加
仕上げ期 30〜36ヶ月 最高品質濃厚飼料(9〜11kg/日) BMS No.9以上への調整

5.4.2 ストレスと霜降りの関係

慢性ストレスは霜降りを減少させる。 ストレスホルモンであるコルチゾールは:
- 脂肪分解(lipolysis)を促進し、脂肪蓄積を抑制する
- 筋肉の異化作用を促進し、肉質を低下させる
- インスリン感受性を低下させ、エネルギー利用効率を下げる

このため、優良な肥育農家は牛舎の快適性・牛への扱い方に細心の注意を払う。音響・温度・密度・取り扱い者の動作など、あらゆる要素が霜降り形成に影響する可能性がある。

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5.5 牛肉品質評価基準(BMS)

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5.5 牛肉品質評価基準(BMS)

5.5.1 日本食肉格付協会(JMGA)の規格

日本では日本食肉格付協会が「牛枝肉取引規格」を定めており、「歩留り等級(A〜C)」と「肉質等級(1〜5)」の組み合わせで評価される。

肉質等級の4項目:

評価項目 概要 最高評価(5等級)
脂肪交雑(BMS) 霜降りの程度 BMS No.8〜12
肉の色沢 BCS(Beef Color Standard)No.3〜5が理想 BCS No.3
肉の締まり・きめ 筋繊維の細さと緻密さ 極めて緻密で締まり良好
脂肪の色沢と質 BFS(Beef Fat Standard)No.1〜4 BFS No.1〜2

BMSスケール(Beef Marbling Score):

BMSスコア 脂肪交雑の程度 等級換算
No.1 ほとんどなし 1等級
No.2 少ない 2等級
No.3〜4 やや少ない 3等級
No.5〜7 中程度〜多い 4等級
No.8〜12 著しく多い 5等級

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参考文献・Further Reading

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参考文献・Further Reading

  • 農林水産省「牛枝肉取引規格」最新版
  • 日本食肉格付協会「牛枝肉格付規格の解説」
  • Lefaucheur, L. A second look at fibre typing - relation to meat quality. Meat Science, 2010.
  • Gotoh, T., et al. Genetic mechanisms of adipogenesis in Japanese Black cattle (Wagyu). Animal Science Journal, 2014.
  • 山本嘉則「和牛肉質の科学」畜産技術協会、2018年
  • Emenheiser, J.C., et al. Phenotypic and genetic relationships between marbling score and meat quality traits in Japanese Black cattle. Journal of Animal Science, 2010.
  • 全国和牛登録協会「黒毛和種の体型・肉質の遺伝的改良」最新版

本テキストは焼肉大学YU-101「牛肉解剖学」の公式テキストである。無断転載・複製を禁じる。

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