5.2 脂肪細胞の生物学

5.2.1 脂肪細胞の分化過程

霜降りの形成は、脂肪前駆細胞(preadipocyte)成熟脂肪細胞(mature adipocyte)へと分化する過程に依存する。

脂肪細胞の分化は以下の転写因子カスケードによって制御される:

間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell)
        ↓ C/EBPβ・C/EBPδ活性化
脂肪前駆細胞(Pre-adipocyte)
        ↓ PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)
        ↓ C/EBPα の活性化
成熟脂肪細胞(Mature Adipocyte)
        ↓ 中性脂肪の蓄積
霜降り(サシ)形成

PPARγの重要性:PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor gamma)は「脂肪細胞分化のマスター調節因子」と呼ばれ、脂肪細胞への分化に不可欠の核内受容体である。和牛ではこのPPARγの活性が他品種に比べて高いことが霜降り形成の多さに寄与していると考えられている。

5.2.2 霜降り形成の組織学的過程

  1. 幼若期(0〜12ヶ月):筋肉の成長が優先され、筋繊維の数と径が増加する
  2. 発育期(12〜18ヶ月):筋間・皮下脂肪の蓄積が始まる
  3. 肥育期(18〜30ヶ月):筋肉内への脂肪蓄積(IMF)が本格化する
  4. 仕上げ期(30〜36ヶ月):高エネルギー飼料(濃厚飼料)によるIMFの最大化