1.1 牛の骨格系全体像

1.1.1 牛骨格の基本数値

成体の黒毛和牛(雌)の基本的な体格指標:

計測項目 標準値
体重 450〜550kg
体高(キ甲部) 120〜130cm
体長(肩端〜坐骨端) 135〜145cm
骨の総数 約208〜210本
骨格の総重量比 体重の約15〜18%

解剖学基礎知識:哺乳類の四肢骨格は基本的に相同構造(ホモロジー)を持つ。ヒトの手首(手根骨)は牛の球節部に対応し、ヒトの踵骨は牛の飛節(跗関節)の踵骨に対応する。牛は指先(第3・第4指)で立つ「偶蹄類」であり、この特殊な趾行性が脚部筋肉の発達パターンを決定している。

1.1.2 主要骨格の名称と位置

頭部〜頸部の骨格
- 頭骨(とうこつ):前頭骨・頭頂骨・後頭骨などから構成。角は前頭骨の突起から発達。
- 頸椎(けいつい):7個。頭部支持と広い可動域を持つ。頸部は「タン周辺筋群」「頸根部筋群」の骨格基盤。

体幹の骨格
- 胸椎(きょうつい):13個。棘突起が長く発達し、「ロース」や「リブ」部位の骨格を形成。
- 腰椎(ようつい):6個。体幹後部を支持。「サーロイン」「ロース」後部の骨格基盤。
- 仙骨(せんこつ):5個が癒合。骨盤後端を形成。
- 尾椎(びつい):18〜20個。テールスープの原料。
- 胸骨(きょうこつ)):7つの胸骨節から構成。「ブリスケット(胸部)」の中心骨格。
- 肋骨(ろっこつ):13対(計26本)。真肋8対・仮肋5対。リブロース・ショートリブの骨格。

四肢の骨格
- 肩甲骨(けんこうこつ):前肢帯。「肩ロース」「ウデ(肩)」部位の骨格基盤。扇形で平板状。
- 上腕骨(じょうわんこつ):前肢の最上部。三角筋・上腕筋群の付着部。
- 橈骨・尺骨(とうこつ・しゃっこつ):前腕部。
- 手根骨(しゅこんこつ):前管部(球節上部)。
- 中手骨(ちゅうしゅこつ):前管(前下肢の「管」部)。
- 指骨(しこつ):第3・4指のみ発達。蹄に包まれる。
- 寛骨(かんこつ):腸骨・坐骨・恥骨の癒合体。骨盤を形成。
- 大腿骨(だいたいこつ):後肢最大の長骨。「ランイチ」「シンタマ」の骨格基盤。
- 脛骨・腓骨(けいこつ・ひこつ):下腿部。
- 跗骨(ふこつ):飛節(ヒザ関節に相当)。