2.2 各部位の詳細解説
2.2.1 ネック(頸部)
解剖学的位置:頸椎周辺の筋肉群。主要筋肉は頭最長筋・頸最長筋・菱形筋など。
筋肉繊維の特徴:
- 頸部は常に頭部(約30kgの重量)を支持するため、筋繊維が太く発達している
- 結合組織(コラーゲン)が豊富
- 長時間加熱(煮込み)により旨味成分が溶出する
脂肪分布:霜降りは少なく、赤身が主体。
焼肉での活用:そのまま焼くより牛すじ煮込みや出汁取りに向く。一部の希少部位として「ネック芯」が高評価される。
2.2.2 カタ(肩部)/ ウデ
解剖学的位置:肩甲骨周辺の筋肉群。主要筋肉は三角筋・大円筋・棘上筋・棘下筋・小円筋など。
カタの中の希少部位「ミスジ(三筋)」:
ミスジは棘下筋(Infraspinatus muscle)の前部を指す。
| 特性 | 詳細 |
|---|---|
| 別名 | 「フラットアイアン(Flat Iron)」(米国式名称) |
| 筋繊維方向 | 水平・細繊維 |
| 脂肪分布 | 均一な霜降りが入りやすい |
| 中央部の筋 | 太い白い筋(結合組織)が縦走する |
| 食感 | 柔らかく、独特のリッチな風味 |
| 一頭当たりの取得量 | 約1〜2kg(希少性が高い) |
2.2.3 カタロース(チャックロール)
解剖学的位置:第3〜第7頸椎および第1〜第4胸椎に付随する筋肉群。主要筋肉は頭最長筋・頸最長筋・半棘筋など。
特徴:
- ロースとカタの中間的な特性を持つ
- 霜降りが入りやすいが、やや繊維が太め
- 「肩ロース」として販売されることが多い
2.2.4 リブロース(リブアイ)
解剖学的位置:第5〜第12肋骨付近の最長筋・肋間筋・肋骨挙筋群。
リブロースが「焼肉の王」と呼ばれる理由:最長筋の中でも特に霜降りが入りやすい部位であり、筋内脂肪(IMF)含量が全部位で最も高くなる傾向がある。リブロースキャップ(spinalis dorsi muscle)はリブロースを包む薄い筋肉で、特に風味豊かな部位として珍重される。
筋肉繊維の特徴:
- 繊維方向:体軸に沿って水平
- 繊維径:細(低運動量の証)
- 霜降り(IMF):5〜30%(品種・飼育条件による)
2.2.5 サーロイン(ストリップロイン)
解剖学的位置:第13胸椎〜第6腰椎に付随する最長筋後部。
特徴:
- 背中の後部に相当し、フィレと並ぶ高級部位
- 「サーロイン」の語源については複数の説があるが、英語の「sirloin」はフランス語「surlonge(腰部の上)」が語源とされる
- 脂肪のキャップ(外周脂肪)が厚いのが特徴
2.2.6 ヒレ(テンダーロイン)
解剖学的位置:腰椎腹側に沿って走行する大腰筋(Psoas major)および腸骨筋(Iliacus)。
ヒレが最も柔らかい理由:大腰筋は体幹と後肢をつなぐ深部の筋肉であり、日常的な運動にほとんど使われない。このため筋繊維が極めて細く(タイプI遅筋繊維が主体)、結合組織が少なく、舌でも容易にほぐれるほどの柔らかさを持つ。一頭から取れる量は約2〜3kgと少なく、全体の約1%程度に過ぎない希少部位。
2.2.7 バラ(カタバラ・ともバラ)
解剖学的位置:肋骨下方〜腹部の筋肉群。外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・腹直筋が主体。
| バラの細分類 | 解剖学的部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| ナカバラ(インサイドスカート) | 内腹斜筋 | 繊維が粗め・旨味豊富 |
| ソトバラ(アウトサイドスカート) | 外腹斜筋 | ハラミに近い食感 |
| カイノミ | 腹斜筋下端 | ヒレに近い柔らかさ、希少 |
| ショートリブ | 第6〜8肋骨間のバラ肉 | 骨付きでジューシー |
2.2.8 モモ(ヒンドクォーター各部)
モモは後肢の大腿部に相当し、最も筋肉量の多い部位群である。
| 部位名 | 解剖学的筋肉 | 位置 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ランイチ | 大腿直筋・外側広筋(一部) | 後肢外前部 | 赤身で旨味あり |
| シンタマ | 大腿四頭筋全体 | 後肢前部 | キメ細かい赤身、ローストビーフに最適 |
| シキンボ(マルカワ) | 大腿二頭筋 | 後肢外側後部 | 運動量多く硬め、薄切りで焼肉に |
| ヒウチ | 半腱様筋・半膜様筋 | 後肢後内側 | 「シンシン」とも呼ばれる赤身の代表 |
| トモサンカク(ランプ) | 大臀筋・中臀筋 | 坐骨〜大腿後上部 | 霜降りが入りやすい上モモ系の好部位 |