1.4 全国展開:高度経済成長期(1955年〜1973年)
1.4.1 経済成長と肉食の民主化
1955年から1973年にかけて、日本は年平均9%を超える高度経済成長を遂げた。この経済的繁栄は日本人の食生活を根本から変えた。牛肉消費量は1960年代を通じて急増し、1965年には戦前の消費量を大きく超えた。
国民の可処分所得の増加により、焼肉はもはや特別な日の御馳走ではなく、日常的な外食の選択肢の一つとなっていった。「焼肉屋でバイトした」「家族で焼肉に行った」という体験が、日本人の共有記憶の中に刻まれていったのもこの時代である。
1.4.2 チェーン店の勃興
1970年代に入ると、焼肉のチェーン展開が始まった。牛角の前身となる業態、安楽亭(1973年創業)など、複数店舗展開を志向する経営者が現れ始めた。これにより焼肉は地域性を超えた「日本の国民食」としての地位を確立していった。
1972年のニクソン訪中と日中国交正常化、1973年の第一次オイルショックは日本社会に大きな衝撃を与えたが、焼肉産業はこの時代の困難を乗り越え、むしろ外食産業全体の中で確固たる位置を占めるようになった。