第2章:砥石とメンテナンス

2.1 砥石の種類と役割

砥石のグレードは「番手(#)」で表示される。数字が小さいほど粗く、大きいほど細かい。

種類 番手 役割 使用頻度
荒砥 #80〜#400 欠け修正、刃角再形成、激しく摩耗した刃の再生 月1〜2回
中砥 #800〜#2000 日常の刃先研ぎ、荒砥後の仕上げ途中 週1〜2回
仕上げ砥 #3000〜#8000 刃先の鋭利化、バリ取り、鏡面仕上げ 毎日または2日に1回
革砥(ストロップ) 最終仕上げ、バリ(かえり)の除去 使用直前

砥石の素材

素材 特性 代表製品
天然砥石 均質でなく職人技要、最高の鋭利さ 京都産「奥殿」「中山」
人工砥石(酸化アルミニウム) 均質、コスト低、初心者向け シャプトン、キング
人工砥石(炭化ケイ素) 硬い鋼材向き、切削力強
ダイヤモンド砥石 超硬鋼材(HRC65以上)専用、耐久性高

2.2 正しい砥ぎ角度

角度の基本原則

砥ぎ角度15〜20° が焼肉店用包丁の標準。

角度 特性 適用
10〜12° 極薄刃、最鋭利だが脆い 刺身包丁(筋引き・柳刃)
15〜17° 鋭利と耐久のバランス 牛刀・筋引き(推奨)
20〜25° 刃が丈夫、刃持ち良 骨付き肉・出刃
25〜30° 頑丈だが鋭利さ落ちる 出刃・チョッパー

角度の確認方法(実践)

  1. コイン法:10円玉(厚さ1.5mm)を1枚置いて見た角度が約10°。2枚重ねで約20°の目安
  2. マジック法:刃先にマジックを塗り、砥石に当てて確認(塗料が削れた部分が当たっている)
  3. フィーリング法:熟練すると砥石への刃の「引っかかり感」で角度を感じ取れる

2.3 鋼材別の砥ぎ方

白紙鋼・青紙鋼(和鋼・高炭素鋼)

推奨砥石:荒砥#240→中砥#1000→仕上げ砥#3000〜5000
砥ぎ角度:14〜16°
水砥石推奨(乾砥NG)
砥ぎ動作:前方向に力を入れ、返しは軽く
注意:極めて錆びやすいため、砥ぎ後は即座に乾燥・オイル塗布

VG-10(ステンレス高級鋼)

推奨砥石:中砥#1000→仕上げ砥#3000〜6000
砥ぎ角度:15〜18°
水砥石または空砥石
砥ぎ動作:均一な力で前後
注意:ステンレスでも高Cr含量で若干錆の可能性あり

モリブデン鋼(業務用汎用)

推奨砥石:中砥#800〜1200→仕上げ砥#2000〜3000
砥ぎ角度:17〜20°
砥ぎやすく初心者にも適応
注意:過度に研ぎすぎると角が甘くなる

2.4 バリ(かえり)とその除去

砥いでいると刃先の反対側に「バリ(かえり/burr)」と呼ばれる微細な金属の折り返しが生じる。このバリを適切に除去しなければ、見かけ上鋭利でも実際の切れ味は不十分。

バリの確認方法:
- 親指の腹を刃先に対して垂直に軽く当て、引っかかり感を確認
- バリがある側ではザラザラした感触

バリの除去:
1. 仕上げ砥石の最終工程で両面を交互に数回砥ぐ(枚数を減らしながら)
2. 革砥(ストロップ)に刃の背を引く動作で仕上げ
3. 厚紙やダンボールで軽く払う方法も有効