Chapter 6: アレルゲン管理 {#chapter-6}
6.1 食物アレルギーの仕組み
食物アレルギーは、食品中の特定タンパク質(アレルゲン)に対してIgE抗体が産生されることで起こる免疫過敏反応(I型過敏症)である。
アナフィラキシーショック: 重症の場合、血圧低下・意識消失・呼吸困難が生じ、15分以内に死亡することもある。エピペン(アドレナリン自己注射器)が必要になる。
6.2 食品表示法の特定原材料(7大アレルゲン)
食品表示法(2015年施行)により、加工食品・メニュー表示での記載が義務付けられている(特定原材料 8品目 ← 2023年改正でえびの類が追加され8品目に)。
特定原材料(表示義務、8品目):
| アレルゲン | 代表的なアレルギー反応 | 焼肉との関連 |
|---|---|---|
| えび | 甲殻類アレルギー | エビチリ等の副菜 |
| かに | 同上 | 同上 |
| 小麦 | グルテン不耐症、セリアック病 | タレ(醤油の原料)、衣 |
| そば | 重篤なアナフィラキシーリスク | 蕎麦粉使用メニュー |
| 卵 | 鶏卵アレルギー | タレ(マヨネーズ系)、TKG |
| 乳 | 牛乳アレルギー、乳糖不耐症 | バター、チーズ、ミルク |
| 落花生(ピーナッツ) | 最も重篤なアレルギーの一つ | ピーナッツソース |
| くるみ | ナッツアレルギー | デザート等 |
特定原材料に準ずるもの(表示推奨、20品目) ← 一部抜粋:
アーモンド、いくら、いか、いわし、牛肉、鶏肉、豚肉、さば、大豆、ゼラチン、バナナ、やまいも、カシューナッツ等
6.3 牛肉アレルギーの特性
牛肉アレルギー(Beef allergy / Alpha-gal syndrome)は近年注目されている特殊なアレルギーである。
| 種類 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 従来型牛肉アレルギー | 牛肉タンパク質(アルブミン等)へのIgE抗体 | 摂取直後〜2時間で発症 |
| アルファガル症候群(AGS) | マダニ刺傷後に哺乳類糖鎖(α-Gal)への抗体形成 | 摂取3-6時間後に発症(遅発型) |
アルファガル症候群の注意点:
- マダニ(主にローンスターティック)に刺されることで感作が起こる
- 牛・豚・ラム等の哺乳類肉全般でアレルギー反応
- 鶏肉・魚介類ではほぼ反応しない(哺乳類限定)
- 日本でも症例報告が増加中
6.4 コンタミネーション防止と表示義務
コンタミネーション(Contamination: 意図しないアレルゲンの混入)防止:
| リスクポイント | 対策 |
|---|---|
| 調理器具の共用 | アレルゲン食品専用の調理器具を用意 |
| 揚げ油の共用 | 落花生油・ゴマ油と通常油を分離 |
| タレの原材料 | 醤油(小麦含む)を使用していることを明示 |
| 炭・網の共用 | アレルギー客には専用の網を新しく用意 |
| 調理者の手指 | アレルゲン調理後の手洗い徹底 |
焼肉店でのアレルゲン表示実践(メニュー表示例):
【牛カルビ(醤油タレ)】
○含むアレルゲン: 小麦(醤油)、大豆(醤油)
△本品製造工程では卵・乳・落花生を使用した機器と共用しています
→ アレルギーのあるお客様はスタッフにご相談ください
アレルギー対応の接客マニュアル:
1. 予約時確認: 「アレルギーのある食材はございますか?」
2. 来店時再確認: 確認内容をホールスタッフが厨房に伝達
3. 対応可否の確認: 代替メニュー提案 or 提供不可の場合は誠実に説明
4. 調理前の特別確認: 調理担当者が直接確認
5. 提供時の確認: 「こちらはアレルゲン対応メニューです」と明示
6. エピペン準備: 店として緊急時対応計画を準備