Chapter 3: メニューエンジニアリング {#chapter-3}
3.1 メニューエンジニアリングの概念
メニューエンジニアリングは1982年にMichael Kasavana とDonald Smithが開発したメニュー分析・最適化手法である。全メニューを人気度(注文数)と収益性(貢献利益)の2軸で分析し、4象限に分類する。
3.2 4象限分類(BCG型メニューマトリックス)
| 象限 | カテゴリ名 | 人気度 | 収益性 | 戦略 |
|---|---|---|---|---|
| 第1象限 | スター(Star) | 高 | 高 | 維持・強化。看板メニューとして前面に |
| 第2象限 | プラウホース(Plow Horse) | 高 | 低 | 価格改定・原価削減の検討。売れるが儲からない |
| 第3象限 | パズル(Puzzle) | 低 | 高 | 認知度向上・位置の改善。知られれば売れる |
| 第4象限 | ドッグ(Dog) | 低 | 低 | 廃止・リニューアルの検討 |
4象限分類の計算方法:
① 各メニューの注文数(Q)と貢献利益(CM)を集計
※ 貢献利益 = 販売価格 - 食材原価
② 平均注文数(Q̄)と平均貢献利益(CM̄)を計算
Q̄ = 全メニュー合計注文数 ÷ メニュー数
CM̄ = 加重平均貢献利益
③ 各メニューをプロット
Q > Q̄ かつ CM > CM̄ → スター
Q > Q̄ かつ CM < CM̄ → プラウホース
Q < Q̄ かつ CM > CM̄ → パズル
Q < Q̄ かつ CM < CM̄ → ドッグ
3.3 焼肉店での実践例
仮想焼肉店「牛道」のメニュー分析:
| メニュー | 価格 | 原価 | 貢献利益(CM) | 月間注文数 | 分類 |
|---|---|---|---|---|---|
| カルビ(標準) | 1,200 | 420 | 780 | 350 | ★スター |
| タン塩 | 1,500 | 320 | 1,180 | 290 | ★スター |
| 焼きしゃぶロース | 2,800 | 1,260 | 1,540 | 80 | ◎パズル |
| 冷麺 | 780 | 180 | 600 | 420 | プラウホース |
| ホルモン盛り | 1,000 | 280 | 720 | 120 | ドッグ |
| A5サーロイン | 4,500 | 2,700 | 1,800 | 45 | ◎パズル |
分析からの戦略立案例:
- 冷麺(プラウホース): 注文数多いが利益薄。麺の原価を落とすか、50-100円値上げを検討
- 焼きしゃぶロース(パズル): 貢献利益1,540円と高いが知名度不足。メニュー表の目立つ位置に移動・スタッフが積極推薦
- ホルモン盛り(ドッグ): 内容改良(希少ホルモン追加で価格1,400円に改定)でパズルへ昇格させる
3.4 価格戦略
心理的価格設定(Psychological Pricing):
| テクニック | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 端数価格 | 1,000円でなく980円にすることで割安感 | カルビ980円 |
| 威光価格 | あえてキリのよい高額価格で品質暗示 | A5サーロイン5,000円 |
| バンドル価格 | セット販売で単品合計より割安に見せる | ランチセット1,280円(単品合計1,580円) |
| 囮効果 | 中間価格が売れるよう、高価格品を並列展示 | 2,000円・3,500円・5,000円の3段階設定 |
| ドリンク抱き合わせ | ドリンク込みセットで客単価向上 | 飲み放題コースで酒類原価を集合管理 |