第2章:牛の体を知る — 部位マップ入門

なぜ「部位」を知るのか

同じ「牛肉」でも、体のどこの筋肉かによって、味・食感・最適な焼き方がまったく異なります。

焼き師はこの違いを理解し、お客様それぞれの好みに合わせた提案ができなければなりません。

3大人気部位の徹底比較

① タン(舌)

部位    : 舌(ぜっこん〜ぜったい)
脂肪分  : 低〜中(部位による)
繊維    : 細かく均一
最適焼き: 強火・短時間
食感    : コリコリ〜モチモチ
旨味成分: グルタミン酸、イノシン酸が豊富

タンは牛の舌全体を指しますが、部位によって大きく味が変わります。

  • タン先: 先端部分。繊維が細かくコリコリした食感。脂は少なめ
  • タン中: 中央部。バランスが良く、コクと食感を両立
  • タン元: 根元に近い部分。脂がのり、濃厚な旨味。最高部位

古今ではタン元を特に厳選仕入れしています。1頭から取れる量はわずか300g。

② カルビ(バラ)

部位    : 肋骨周辺の筋肉(短肋骨・中骨・三角バラなど)
脂肪分  : 高(サシが入りやすい)
繊維    : やや粗め
最適焼き: 中火・じっくり
食感    : ジューシー・とろける
旨味成分: オレイン酸(不飽和脂肪酸)が豊富

カルビの「カル(갈)」は骨、「ビ(비)」は肋骨のこと。骨周りの肉は運動量が少なく、脂肪が均一に分布しやすいのです。

③ ロース(背肉)

部位    : 背中の筋肉(リブロース・サーロイン・ランプ)
脂肪分  : 中〜高(和牛は霜降り)
繊維    : 細かく柔らかい
最適焼き: 中火・レア〜ミディアムレア
食感    : 柔らかく品のある旨味
旨味成分: オレイン酸・グリシン・アラニン

ロースは運動量が少ない背中の筋肉。だからこそ柔らかく、和牛最高峰「霜降り」が入りやすい部位です。

和牛の「霜降り」とは

サシ(脂肪交雑)が筋肉繊維の間に均一に散らばった状態を「霜降り」と呼びます。

BMS(Beef Marbling Standard)スケール

BMS 霜降り度 呼称
1〜3 なし〜わずか 交雑牛・国産牛
4〜6 中程度 和牛A3〜A4
7〜9 豊富 和牛A5(最高格付け)
10〜12 極めて豊富 特選和牛・極上

口の中でとろける脂の融点は25〜30℃。人間の体温(37℃)より低いため、口に入れた瞬間に溶けだします。これが「口溶けの良さ」の科学的な理由です。